日本に優秀なFP&A(経営企画)人材を増やしたい
欧米企業には、FP&A(Financial Planning & Analysis)という仕事があります。CFO組織の中にいて、管理会計業務を行います。本社や事業部や部門にいて、業績目標の達成や意思決定を支援します。欧米ではCPAやMBAの人がなるのが一般的です。
日本企業でいうと、経営企画、事業企画、原価企画の人たちが近いですが、同じでもありません。FP&Aは管理会計専門職で、欧米には資格があり、その職でキャリアアップしてCFOになったり、転職したりもできます。日本に来ている外資系企業では、FP&A人材を採用していますが、なかなか人材がいなくて苦労しています。状況は、
- 日本市場で、欧米企業がもとめる世界水準のFP&A人材が採用しにくい。
- 採用できても、対象人数が少なく、費用が高くなる。
- 優秀な日本人がいても、日本以外の市場では活躍できていない。(たとえば、インド人、中国人たちは優秀でアグレッシブです)
- 欧米企業にとって、日本市場は、利益率が低い、優秀な人材が確保しにくい国。優先順位が低くなり、日本に置く機能を減らしている状況。
理由は、
- 日本企業に欧米企業のようなFP&A職がないので、そのスキルを持った人材がいない。
- 日本企業の管理会計担当者(経営企画など)がFP&A人材になるための教育に接する場がない。
- 日本人の英語力が低い
そこで、外資医系企業で現在とられている対策は、次のようになります。
- 外資系企業向け人材紹介会社を利用して人材獲得。(狭い選択肢。高い費用)
- 優秀な新卒学生を、現時点のスキルにかかわらず採用して、入社後に育てる。日本以外の新入社員は欧米のCPA,MBAが多いので、日本人が追いつくのに2-3年かかる。(P&Gの例)
- 海外の大学・大学院卒、または海外で勤務した人材を採用する。
それでは、日本企業ではどのような状況なのでしょう。課題は、
- 経営企画部に、社内の事業部・部門から優秀な人材を集めるが、欧米企業のFP&A人材が有するような教育はなされていない。
- 経営企画の方たちは、社内業務・事業には詳しいが、経理財務・コーポレートファイナンス・経営学などについてまとまって学習したことはない人が多い(例外的に、中小企業診断士やMBAの勉強をしたり、海外MBA取得者を採用している場合もあります)。
理由は、日本企業の一般的な事情からきます。
- 管理会計が、経営企画、事業部の事業企画、原価企画など、さまざまな部門担当者によって担当されており、一つの部門に属さず、まとまった統一的な教育はされていない。
- 職種別採用がされず、入社後も職種をまたいだ異動がある。
- 財務会計に関する研修はあっても管理会計に関する研修は少ない。
実は、日本企業の経営陣が、FP&A機能・人材のあるべき姿を知らないため、現状に課題を感じていないため、対策も取られていないのが現状です。ただ、課題を感じている場合に現在取られている対策は、
- 海外MBA修了人材を採用して、戦略・企画部門に配置する。ただし、中途採用者は社風ににあわず、長続きしないケースが多い。
- ファンドが投資している日本企業では、外資系ファイナンス人材をCFO/経営企画に採用するケースもある
日本企業で、経理の方がビジネスに関わって貢献してきた会社でも、その貢献度が低くなっている状況があります。その理由は、
- 必要だが直接事業価値向上をうまない業務の増加で、時間がない。
- 業績が思わしくないため、年中業績予想の更新作業
- 会計制度変更・報告業務・内部統制に関する追加要求
- 経理財務社員の人数を減らす方向(シェアードサービスなど)
スキル・資質不足も課題でしょう。
- ビジネスモデルの変更に、ついていけていない。(モノ消費からコト消費へ)
- もともとビジネスの議論に加わるのが苦手。CFO組織の中でも、FP&A担当になるのか、経理財務担当になるのかは、キャリアの選択事項です。きちんとした答えがないと仕事がしにくいと思う方は経理財務が向いているでしょう。
- 経営陣・事業部幹部にFP&A機能の理解がないため、自分の部内で企画担当者(経理財務スキルがない)を作ってしまう。
さて、どうすればいいのでしょう。こちらは私の提案です。なかなか達成するのが困難ですが、これからも呼び掛けていきたいです。
- 経営企画・経営管理・経理財務部門を連携・統合して、CFO組織を作る。
- CFO組織が財務会計・管理会計の両方を主管する。
- CFO組織内にFP&A部門を作り、コーポレート部門だけでなく、各事業部・部門にも配置して、業績目標達成と意思決定の支援を行う。
- FP&A部門に適切な教育(管理会計・戦略・コーポレートファイナンス)と人材育成を行う。
- 「管理会計教育」には、理論だけでなく、業績を向上させるFP&A人材になるための行動原則も含める。(IMA, CGMAが作成しているフレームワークを利用)
ほかにもFP&Aに関する記事を書いています。 こちら