新卒でジョブ型採用の外資系
最近、日本の大企業のミドルの方に、「メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用のどちらがいいと思うか?」と質問された。
私は外資系企業にしかつとめたことがなく、今は日本企業に勤めているが、私のスキルと経験を買われて採用されているので、ジョブ型雇用しかしらないと言えるだろう。私がその方にした質問は、「メンバーシップ型雇用をしているのは日本だけではないですか?日本は伸びてますか?」ということです。
私が新卒で就職したのはP&Gのファイナンス部門でした。職種別採用をしていて、会社説明会がすでに職種別になっていました。P&Gといえばマーケティングなので、マーケティング部門が一番人気です(宣伝本部と言っていました)。その他には、ファイナンス(経営管理)、営業、サプライチェーン(生産本部)、HR(人事)、PR(広報)、Legal(法務)、R&D(研究開発)などがありました。それぞれの部門で説明会をし、ワークショップで選抜し、そのあとは面接をして採用者を決めるというやり方でした。ワークショップのところは、そのころはファイナンス部門は学生を10人くらいのグループに分け、新商品シャンプーのローンチ計画などのケースで競わせ、社員がテーブルを回って見どころのある学生を選ぶというやり方でした。
私は文学部英文学科だったのですが、イギリスに語学留学をしたときに少し簿記を習い、帰国後に簿記3,2級の学校に通いました。しかしその程度です。ファイナンス部門が何をするのだかよくわかっていなかったのですが、幸い入社できました。
私が20代後半のころ、アジアの新入社員がP&Gカレッジ1という研修で一同に集まるというものが始まりました。(私が入ったころはなかったんですが)。研修に参加した新入社員のリストがありました。日本以外の国の新入社員は、大学や大学院でAccountingやManagementを学んだ人しかいません。日本だけ工学部、文学部、法学部。。。わたしの上司がアメリカ人だったので、「なんで日本だけ、会計を勉強していない社員ばかり入れているの?」と質問されました。ほんとに日本だけです。
わたしの回答は、次のようなものだった。
- 日本は終身雇用という制度があって、基本的には入社した会社で定年まで過ごす
- 企業は、学生が大学で何を学んだかは気にしない(少なくとも文系は)。職種別採用もしない。入社して長い長い年月をかけて育てるので気にしないのだ。
- P&Gとしては、本当は会計や経営を学んだ学生を採用したいのはやまやまだが、それに絞ると良い学生を採用するのが難しい。そこで、専攻は問わないで、本人の質で採用することにしている。
- さらに、英語ができるかどうかを問うと、さらに採用もできないので、英語ができなくても採用することにしている。ほかの国の新入社員は海外の大学で学んだりMBAをとったりしている人たちが大半なので、英語ができないことはまずない。日本人だけは、入社後に何か月かアメリカに行かせて英語を特訓する。2-3年で、会計も英語もなんとかほかの国の人たちに追いつく。
これは今から25年くらい前の話なのです。あれから変わっていませんね。日本だけが違うのですが、日本企業のみなさんはそれに気が付いていなかったり、気が付いていたとしてもそれが問題だとは思ってこなかったようです。
最近いよいよですね。ジョブ型雇用に移行すると言っている企業が出てきました。
わたしは文学部を出てP&Gのファイナンス部門に入り、FP&A(Financial Planning & Analysis)の仕事を主にしてきました。30代半ばにUSCPAをとってやっと会計については体系的にわかりましたが、中小企業診断士やMBAの勉強をしたのはずっとあとだったので、基本を知らずにずっと実務をしてきました。とても残念なことです。それらの知識・スキルが最初からあればよかったと思いますが、当時、日本には勉強するすべがありませんでした。
外資系企業で働いていると、日本だけ、ということがいくつかあります。日本人だけ英語が下手。日本だけ女性管理職がいないまたは少ない。米国企業で日本だけ違う、というのはまだいいです。しかし、日本企業がグローバル化するにあたり、本社である日本だけ違う、という状況は、海外子会社のみなさんにとって迷惑なことではないでしょうか。日本企業の業績がよいのならいいのですが。。。よくはないですよね。
みなさん、「もしかして、日本だけが変?」ということに気が付いて、世界を見ませんか。日本だけが変で、それがよいのならば継続すればいいです。もしそれが、日本企業の停滞の理由の一つであるのならば、海外の企業に学んでみませんか。