欧米では1990年代から、ファイナンス部門がビジネスパートナーとして事業の業績目標達成と意思決定に貢献する役割に変化していることが、報告されています。

デロイトトーマツグループ (2018)は「ビジネスパートナー」を、「①CFO組織としての人材が②事業部門と一緒になって事業戦略の構築や戦略転換の検討に参加・貢献し、事業上の意思決定に貢献する姿を指す。さらに③本来の経理財務としての数値管理能力、内部統制能力を担保したままその任に当たることをミッションとする」と定義つけています。

欧米企業のファイナンス部門は、CPAやMBAが入社して、財務会計部門と管理会計部門(FP&A)をローテーションし、事業部や部門にも配置されて事業を支援します。日本企業の場合、財務会計部門と管理会計部門がひとつの組織になっていなかったり、管理会計を担当している方が経理財務出身でないことはよくあります。よって、上記の①②③を同時に満たすことが難しいと考えられます。

欧米の管理会計担当者を支援する団体から、ビジネスパートナーとなるための指針が出されていて、とても参考になります。

① CGMA は、“Building a better business, together. Welcome to finance business partnering”というガイドを発表しています。

  • 管理会計担当者の役割は、会計・経営情報を提供し、専門家として意思決定の改善に貢献することである。専門家としての厳格性、客観性、会計・分析のスキル,ビジネスの理解をもって、CFOの影響をビジネス全体に及ぼすことである。
  • Finance Business partneringは,効率よく必要なデータやレポートを作成し、それに分析やインサイト(洞察)を加えて情報を提供し、ビジネスを行うものに影響を与え、実際に業績向上に貢献することである。
  • まずは会計・分析スキルに加えてビジネスの理解があり、そのうえで,ビジネスへの情熱と好奇心を持って専門家として客観的に判断ができ、事業部にビジネスパートナーとして影響を与える,といった資質とスキルが求められる。

②. AFPは、“How FP&A Can Become A Better Business Partner”というガイドを発表しています。

管理会計担当者が価値あるビジネスパートナーとなるための次のような方法を指南しています。

  • FP&Aがビジネス担当者とよきパートナーシップを確立して、顧客本位の視点を持ち、情報収集ができ、組織の戦略と合致した行動がとれ、組織のメンバーにアカウンタビリティ(説明責任)を持たせることができ、インサイト(気づき)や価値あるアドバイスを提供できるようになることを目的とする。そのためには、次のことが重要である。
  • 事業の場に身を置き、事業を知り、事業担当者とよい関係を作り、かつ独立した客観的立場で、価値あるアドバイスができるようになること。
  • CFOの下に適切なFP&A組織を整備し、組織のミッションを確認すること。
  • テクノロジーを使いこなして効率よく業務にあたること。

参考文献:デロイトトーマツグループ. 2018. 実践CFO経営: これからの経理財務部門における役割と実務. 東京: 日本能率協会マネジメントセンター.