米国企業のCFO組織に属する管理会計担当者(FP&A, Management Accountants)が事業部や部門に配置されて,実際にどのようにビジネスパートナーとして業績目標達成と意思決定支援に貢献しているかを,筆者の実務経験を踏まえて具体的に紹介します。
米国企業消費財製造業B事業部でのFP&Aコントローラーの行動事例:
- 事業部のチームの近くに席を置き,日々の行動を共にする。
- チームの定例会議に出席して事業の理解を深め,チームメンバーとの信頼関係を築き,そのチーム全体のゴール・目的を理解して,中長期経営計画,単年度予算,業績予想などをとりまとめ,数値だけでなく,その前提となった非財務情報・仮定も管理する。
- チームメンバー個人の業績目標も理解して,目標達成をサポートする。それが事業全体の目標達成に寄与する。
- 業績目標進捗管理会議体を主催する。チーム業績の実績・進捗をモニターして,状況をチームに伝え,未達の場合は適切なアクションを促し,余裕があれば次の投資を促す。課題があれば,チームメンバーと共に解決策を探す。
- ファイナンスの観点から投資案件などの意思決定に参画する。本社のCFOと連携して全社的視点でアドバイスを行う。本社のCFOやFP&Aと連携して投資予算を確保する。
- 商品・サービスごとの損益分析とそれに基づく対応(良いものは伸ばす。損失を出しているものは改善する,やめるなど),価格・販売戦略,原価削減,広告宣伝費・販売促進費・一般管理費の管理など,売上・利益・キャッシュフローを増やすべく,分析をして,対応策をチームと協議,実行する。
- チームメンバーにとって知識が少なく理解しにくい経理・財務・税務・内部統制に関わる課題を,CFO組織内の担当専門部署と連携して解決し,チームメンバーにわかりやすく説明する。
- チーム全体の業績目標達成状況や投資案件の進捗状況等をまとめてCFOやシニアマネジメントに報告する。
- CFOから情報を得て,会社全体の業績目標達成の進捗状況や他事業部の状況を所属するチームに伝えてチームメンバーの活動がいかに全社目標の達成につながるかについて理解を促す。
- チームメンバーに必要なファイナンス知識の研修・コーチングをする。
- チームの内部統制活動をサポートし,ミスや不正が起こらないように目を配る。
FP&Aコントローラーは,本社のCFOのサポートを受けながら,自分の属するクロスファンクショナルチームでは,ミニCFOのように行動します。事業部における意思決定に寄り添い,新商品開発,改良,宣伝広告や販売促進への投資,設備投資をするなどの際に,プロジェクトの初期段階から関わり,ひとつひとつの意思決定が財務的に良い決定であることを確認します。
クロスファンクショナルチームでのコンフリクトを解決
クロスファンクショナルチームでは,それぞれの担当者の間でコンフリクトが生じます。例えば,営業・マーケティングとしては,品数が多い方が売上金額は増えますが,製造側からすれば効率は低下し,在庫が増えます。最適な品数はいくつなのか,ファイナンスが全社的視点で分析と意見調整をします。また,数量シェアを重視すると価格は安い方がいいですが,利益は低くなります。品質の良い商品を作りたい場合,原価は高くなります。全社的立場で助言できるFP&Aコントローラーがいれば,各部門のコンフリクトを解決し,チーム全体の業績目標を達成するための最適解を見出すことができます。
CFOがFP&Aコントローラーを見守る
普段は事業部長の指示を仰ぎながら,チームの他部門の担当者とやりとりをし,時折CFOと連絡を取り合うというワークスタイルは,容易なものではありません。CFOが時折様子を見に来て事業部長やチームと会話をし,FP&Aコントローラーの働きぶりを見守り支援することをおすすめします。
FP&Aコントローラーが,事業部の他,営業部門,製造部門,研究開発部門等に配置される場合も上記と同様に,その部門の活動に寄り添い,部門の業績目標を理解して,その達成と意思決定を支援します。