Management Accountants(管理会計担当者)の機能の研究をしています

わたしは、日本企業の管理会計担当者(Management Accountants)の機能を高めれば、業績が向上すると思い、研究しています。管理会計というのは、企業の業績目標達成や意思決定を支援する会計のことです。日本企業では、経営企画・経理財務などの人たちのほかに、事業部や各部門に予算設定、予算管理、投資案件評価、原価管理などをする人たちがたくさんいます。

もともとのわたしの問題意識は次のようなものです。まず、同じ業界で比べた時、日本企業の営業利益率は欧米企業に比べて低い。例えば食品業界では、日本企業は数%。欧米企業は15-20%が普通です。

外資系企業で子会社のCFOとして働いていて、自分たちの管理会計担当者としての機能が、子会社の売上と利益を向上させることに貢献していると思っていました。本当に年がら年中、利益予測のアップデート、経営会議用の資料作りと発表、新製品や新規投資案件のPL/NPV計算などをやって、どうやったら目標の売上と利益が達成できるか、どうやったら新規投資をうまくやれるかを考えて、仕事をしてきました。ところで、日本企業がどうなっているかを調べると、経理財務の人たちはビジネスに関わっていません。事業部には、事業企画という、経理財務でない人たちがPL計算などをしていません。日本企業の企画の人たちは優秀な人たちではありますが、会計知識が十分なわけではなく、事業部に属するため事業部長にものが言いにくい状態であることが多いです。

日本企業と欧米企業の利益率が違うのは、もちろんいろいろな理由がありますが、管理会計担当者の働きの違いにも影響されているのでは?と思います。日本企業も、管理会計の機能を高めれば、利益率が上がるのでは?と思います。

MBAの2年目にこのテーマで論文を書きました。そのときは、わたしのテーマを指導してくれる先生が見つからず、先行研究の見つけ方もわかりませんでした。”CFO”で検索しても、そのような論文は出てきませんでした。

MBAを修了してから、会計大学院の博士課程に入ることができました。指導教授が「管理会計担当者」に関する論文を紹介してくれました。やっと私が探していたものに出会うことができました。

本日、日本会計研究学会で、管理会計の有名な先生が、さらに管理会計担当者の機能についての先行研究をたくさん見つけていることを、報告されているのを聞いました。また、わたしが探しているものがたくさん出てきました。とてもうれしく、ワクワクします。先生が紹介されている先行研究は海外のものばかりです。「Management Accountants(管理会計担当者」の機能とその業績への効果について、たくさんインタビューをしてまとめている論文が、海外にはたくさんあります。日本にはほとんどない。その違いはどこから来るのだろうか。

日本企業は、社員の専門能力を重視しない。理系は重視するのでしょう。。。文系だけの問題でしょうか。新卒社員を採用する際に、大学での研究や成績を気にしません。入社してからも営業から経理になったり、専門性が無茶苦茶です。専門教育もありません。欧米企業ではファイナンス部門に来る人は、CPAかMBAが普通です。会計を勉強せずに経理部に配属されることはありえません。終身雇用だから、何十年もかけて社内で勉強すればいいということになっているのでしょうか。

日本では専門性が重視されないから、管理会計担当者のような専門職の機能が業績に与える影響に関して、だれも興味を持たないのではないでしょうか。

さて、わたしはこのテーマで研究を続け、論文を書きたいと思います。日本企業の業績向上に貢献したいのです。このテーマの論文を書いても日本企業は興味を持たないのではないか?そうかもしれないですが、わたしはこのテーマで講演を続けており、毎回、何人かの人たちから、「はじめて聞いた」と言われて好評です。しかし、実際、日本企業を変えることはないようです。続けていくしかないと考えています。

今のところ、日本企業に、管理会計担当者を統括するCFO組織ができるのは、外資から来た人が社長になったときくらいです。ただ、その外資出身の社長さんたちも、なかなか長続きしていない。社長さんが失脚すると、連れてこられたCFOの方も失脚になってしまいます。もともとの日本の会社に戻ってしまうからです。

日本企業の経営者に、管理会計担当者の機能をたかめると業績がよくなることを、これからも説明していきます。