中期経営計画の成功確率を上げるため、CFO組織の確立を。

日本企業の経営課題に、中期経営計画が達成できないという問題があります。ひとつの理由は、中計が、単年度予算や、日々の経営活動に落とし込めていないからです。

一般的には、3年から5年先の中期経営計画を作成する企業が多くなっています。その企業の理念に基づき、会社のなりたい姿をビジョンとして思い描き、それを達成するための戦略策定、事業ポートフォリオの計画を行い、限られたヒト・モノ・カネの資源をどう配分すれば目標が達成できるのか、熟慮がなされます。外部環境、内部環境の分析もされ、どの事業を伸ばすのか、どんな新規事業を始めるのか、また、どのような事業は今後伸びないとして時には撤退の決断をするのか、決めていきます。

中計が社内で合意されてると、それに連携した単年度の予算や年度別の事業計画が作成され、具体的な月ごとの売上、生産、利益計画が立てられ、各事業部や部門での具体的な活動計画に落とし込まれます。

年度が始まりますと、日々、月次で実績が現れますので、実績が予算と何がどう違ったのかの分析をし、当初の目標を達成すべく、PDCAが高速に回されています。

というのは理想の姿ですが、実際はそのようにうまく行く企業さんばかりではないようです。これは日本企業の特徴ではありますが、今まで述べた中計、予算、業績予想が別々の部署で主管されているため、一貫性がなく、実現がされにくいという事情があるようです。たとえば、中計は経営戦略部、経営企画部が中心になって策定され進捗管理されます。中計策定の前提となる仮説が事業部門と十分合意されておらず、コミットされていない場合があります。 単年度予算は経営管理・経理部という別部署で主管され、年度が始まる前の何か月も前から多数の部門を巻き込んで細かい計算がなされ、年度初めの前の月に事業部長から経営陣に説明がなされるようですが、そのころには、もう世の中の状況はかなり変わってしまっていることもあります。 そのため、年度が始まってまだひと月しか決算実績がでていないのに、もう一年分の業績予想を細かくやり直してしまう。そのままずっと毎月毎月膨大な時間をかけて業績予想をし続け、予算と何が違ったのかを分析する暇もなく走り続けることになってしまいます。そうなってくると、もともとの中計とのギャップを理解することはさらに困難な作業になり、日々の業務に追われてしまします。

中計で描いた会社の財務・非財務目標を達成するための単年度予算であり、それを達成するための業績予想であるはずが、日々の業務に追われてどんどん離れて行ってしまうそうです。これを防いで、本来の目標を達成する方法はないのでしょうか。

まずは、経営管理のあるべき姿から考えて行きましょう。
先ほど申しましたように、中期経営計画は、会社の経営理念に基づき、中期のビジョンを達成するための計画です。そこでは、会社のなりたい姿になるための戦略策定、事業ポートフォリオ計画、経営資源配分がなされます。単年度予算は、その中計の一部としての事業計画が切り取られ、毎月の売上・生産・利益予算などや、事業部の活動計画に落とし込まれるのが一般的です。そうして、中期経営計画が達成できるようにします。また、その年度にはいり、決算結果や非財務情報を確認しながら、今年度の着地を、業績予想として確認していきます。その際に、仮説のはずれを確認し、早くアクションをとって、目標の達成に向かって進んでいきます。

先ほど、日本企業では、この中計、単年度予算、業績予想のプロセスが、別々の組織によってリードされており、整合性がとりにくいという話をしました。欧米企業では、完ぺきとは言えませんが、比較的、その3つのプロセスの整合性がとりやすくなっています。欧米企業では中計・単年度予算・業績予想の整合性がとりやすいのはなぜか。ひとつはその組織構造にあると思われます。

欧米企業では、経営企画・経営管理・経理財務などの部署がCFOの下にあり、ひとつの専門家組織として運営されています。また、各事業部にファイナンシャルコントローラーが配置され、彼らが日々の予算管理・業績予想を行い、CFOにレポートします。よって、中計・単年度予算・業績予想の一貫性が担保され、中計の達成確率を上げることができるのです。

中計と単年度予算と業績予想をCFOが主管して、整合性をとり、中計を達成に導く。そのためには、ばらばらに動いている経営企画、経理、事業部の予算管理担当者を束ね、まとめて管理する必要があります。日本企業でも、それらの人たちがCFO組織にはいり、一貫したプロセスで動けるようにすれば、中計の達成率があがるでしょう。

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