シャドーファイナンスとは?
米国企業では、「シャドーファイナンス」という言葉があります。CFO部門に属さないが、ファイナンス(会計)の仕事をしている人という意味です。
米国と英国の管理会計担当者向け支援団体であるCGMA (Chartered Global Management Accountants)が、Building a better business, together という、とても参考になるガイドをだしています。こちらの図表5に、管理会計担当者が提供するサービスのリストが載っており、それを日本語訳してみました。
cad095c360fc398f00592157fb2c7371CGMA によると,管理会計担当者が支援する組織に対して提供するサービスは上記の図のように整理されます。下段の①から④は経理財務部門が行う財務会計業務です。①情報システムの整備,②財務会計とオペレーション,③その他会計専門家としてのサービス提供,④外部への財務報告の4項目です。これらは管理会計担当者が自ら行うというよりは,経理財務部門の他のチームが主管しているサービスを必要に応じて支援する組織に提供する形でしょう。
⑤管理会計情報の報告と⑥意思決定と業績目標達成支援は,管理会計業務で、ビジネスパートナーとしての役割が発揮できる業務でしょう。管理会計の情報を報告するだけではなく,分析や提案を提供して,業績目標の達成に貢献します。また,意思決定の質を高めるべくアドバイスをし,リスク管理,プロジェクトマネジメントも担当するという業務です。
⑦はファイナンス部門・経理財務部門以外で事業部門が雇用している計数管理担当者が会計情報を作成・提供している場合で,シャドーファイナンス(影のファイナンス)や,グレーレポーティング(灰色報告)と呼ばれているとのことです。これは企業にとっては,ファイナンス部門が把握していない数字によって事業部門の意思決定が行われ,企業内で同様の業務が重複する望ましくない状況であり,⑦の人員もファイナンス部門の配下につけるのが望ましいとしています。
一般的な米国企業では①から⑥までCFO部門が担当しており、⑤と⑥が管理会計を担当するFP&Aの業務となります。
日本企業の場合、①から④は経理財務部門が担当しているでしょう。⑤の一部の予算作成、予算管理業務を経理財務部門が担当していることも多いでしょう。ほかの⑤と⑥の業務は経営企画部門や事業企画が担当しているのではないでしょうか。日本企業では、各部門の数字に強い人が計数管理担当者になることが多く、⑤⑥⑦の方々が、いろいろな部署にいるイメージではないでしょうか。
この図で、米国企業と日本企業の経営管理組織業務の違いがわかっていただけると思います。
米国企業風に言いますと、①から⑦まですべてCFOの配下にいれて、全社視点で会計とファイナンスの仕事を統括したほうがいいのでは?ということです。日本企業は経理財務、経営企画以外にも、さまざまな部門で①から⑦の業務がおこなわれていて、一人の役員が全部の社員のキャリアや教育に責任を持つということがありません。そもそも職種別採用をせず、ジェネラリストを育てるのが一般的な日本企業では、①から⑦までの業務をまとめて概観するという文化がないのだと思います。
どちらが必ずいいとも言えませんし、たとえ米国風が企業価値を高めるために適しているとしても、日本企業の経営管理組織を変えることはすぐには困難です。しかし、①から⑦までの業務につく皆さんが、それぞれ必要な知識・スキルを知り、それを身に着けることは必要なはずです。
ご関心のある方は、このサイトでご興味のある部分を読んでいただければ幸いです。