PL責任を持つブランドマネージャーを支えるP&G ファイナンス部門

最近P&G出身のマーケターが多方面で活躍している。マックをV字回復させた足立光氏、P&G時代はファブリーズをヒットさせ、今はマーケティングのコンサルティングをされている音部大輔氏。P&G,ロート製薬、ロキシタンを経てスマートニュースのマーケティング責任者をされている西口一希氏。かつて同僚だった人たちだ。

西口さんが、P&Gで入社3~5年後にはブランドマネージャーとしてPL責任を持った話をされている。https://markezine.jp/article/detail/31198

P&Gでは、マーケティング部に入社して3~5年後にブランドマネージャーとしてブランドのPLに責任を持ち、それから、複数のブランド(カテゴリー)に責任を持つマーケティングディレクターになり、それから、そのカテゴリー(事業部)の責任者(General Manager) になり、社長になる。ブランドマネージャーの段階で、すでに小規模経営者だ。マーケティングだけでなく、営業・サプライチェーン、PLを含む全体に責任を持ってプロジェクトを回す。

このP&Gのマーケティング部門のPL責任を支援するのがP&Gのファイナンス部門だ。P&Gのファイナンス部門は、経理財務・税務のほかに、いわゆるFP&A(Financial Planning & Analysis)の業務を担当する。ファイナンスチームは事業部の席に座って、事業部門の日々の仕事を支援する。先週の売上を見て、今後のアクションを考え、月次の売上・利益の予測をアップデートして、今年の目標を達成する策を練る。新商品の立ち上げチームにはいって設備投資、宣伝広告費の投資について財務分析をする。

ブランドマネージャーが自分のブランドのPLに責任を持つためには、ブランドごとのPLについて数字を出してアドバイスしてあげることが必要だ。ブランドPLの内訳として、細かいSKU(Shelf Keeping Unit)ごとの内訳も必要だ。私がP&Gにいたころは、まだあまり自動化が進んでいなかったため、商品の原料費、包装材料費をエクセルで手計算していた。購買部門に原料の単価を聞き、研究開発部門からフォーミュラ表をもらい、掛け合わせる。製造経費はいろいろ配賦して、SKUごとのコストを計算する。営業利益までのPLを作る。ブランドごとのPLの昨年度分、今年の予測、来年の予測を作って、継続的に成長するように計画する。

日本企業ではここまでブランドごとのPLを作っていないところが多いであろう。それは、ブランドマネージャーがPL責任を持っていないからではないか。それどころか、経理部門が事業部の損益管理にあまり関わっていないようだ。事業部門に企画の人がいるケースが多い。事業部が強くて、CFOも口が出せない。「儲かっているんだからいいじゃないか」と言われるそうだ。しかし、P&Gのブランドマネージメントでは、「儲かっていればいい」わけではない。さらなる成長を求められる。そのために継続的なモニタリングと改善アクションが必要になるのだ。