外資系の人だから日本企業の課題が見える
私はずっと外資系企業、欧米の優良企業で働いてきました。また、日本企業の方たちと合弁事業で一緒にはたらいたことがあり、最近は日本企業の経営改革・経理財務組織のコンサルティングをさせていただいております。
外資系企業で働いた人には、日本企業の経営には課題が見えます。わたしが着目しているのは、CFO組織が確立されておらず、経営企画と経理財務がばらばらで機能が発揮されていない組織構造と、それに伴う経営管理・管理会計の弱さです。これを改善すれば、利益率向上が望めると思います。(くわしくはこちら)
先日、勤めているインテグラートのフォーラムで、元カルビーの松本晃さんに基調講演をお願いしました。松本さんは、伊藤忠商事とジョンソンエンドジョンソンで働いたあと、カルビーの業績を著しく向上させました。カルビーという日本企業の経営課題をみつけ、たくさん改善しました。原料の集中購買による原価低減、価格の適正化、工場の稼働率の改善、オフィスの移転・働き方改革、組織構造の簡素化、事業の第二の柱の樹立など。優良欧米企業の経営管理を知っていたからこそ日本企業の経営の課題がはっきり見え、改善の方法を見つけて実行できるのです。
現在パナソニックでカンパニー社長をしておられる樋口泰行氏が、日本企業を象徴する風刺画をしめされています。日本企業丸という船です。以下、イラストの説明です。「イラストでは、船(=日本企業)は荒波にもまれ穴が開くなど非常事態を迎えているが、船員(社員)はそれに気付かず船の中(社内)のことばかりやっている。一方、企業のトップは今後長く勤めるわけではないことを前提にヘリコプターで逃げようとしており、その横にいる人物は「どうぞお逃げください」ともみ手をしている。日本企業を取り巻く状況(=海)は厳しい状況で、船(=企業)も既に穴だらけ、なのに一握りの経営陣を除いてその危険性に気付いていないというわけだ。」 出所:製造マネジメントニュース:パナソニック樋口氏とサントリー新浪氏が語る、日本企業復活の条件 (1/2)
私がかつて見た日本企業の子会社は、60歳で社長になって2年間やって引退というのが慣例のようでした。外資系企業の日本子会社の社長は40歳くらいです。本社の社長・CFOでも45歳くらいには就任して、10年務めます。60歳で社長になっていったい何ができるんだろうか。。。この船の絵のように、まさしく”逃げ切り”ではないでしょうか。また、船が沈没しそうなことに社員が気づかない。。。というのも納得です。終身雇用でずっといられると思っているのでしょうか。恐ろしいことです。
日本企業と外資系企業との間に人材交流があれば、外資系の人が日本企業にはいって、課題に気が付いて改善する機会も増えるでしょうが、人材交流は稀です。松本晃さんや、樋口泰行さんのように、もともと日本企業の出身の方が、MBA留学を経るなどして、外資系企業に転職し、また日本企業に戻ることはまれにあります。わたしのように新卒から外資系ばかりで働いてきた人には、途中から日本企業に入る道はなかなかありません。外資から日本企業に転職する人がいても、かなり高いポジションで日本企業にはいらないと、何も改革はできません。入ったとしても、何もできずに去ることになってしまいます。
わたしは、日本企業に入れていただくことができなかったので、コンサルタント・研究者・講演者として、日本企業の経営課題を話し、解決策を提案していくことにしました。ほんの少しですが、わたしの話を聞いて、「聞いてよかった」「はじめて聞いてびっくりした」と言って下さる方々がいらっしゃいます。次は、経営課題の改善を推進してくれる企業さんが出てきてほしいと思います。