FP&Aキャリア相談④ 事業部門出身シニアの方

FP&A(Financial Planning &Analysis)という職種があり、わたしはこの職種に関するキャリア相談を受け付けています。
 

最近は、FP&Aを導入する企業が増えてきました。A社は、CFOの下に経理・経営企画・事業管理部門をすべて統括して、米国企業のCFO組織のような体制を始めています。
もともと経理の方は、事業を知らないといけない。もともと事業部門で計数管理をしていた方々は、ある程度の経理財務知識を得る必要があります。というのは、FP&Aは、「会計とファイナンスのプロフェッショナルが、事業をよく理解して、全社視点で客観的に、事業部門の業績目標達成と意思決定を支援する」仕事だからです。
欧米企業では、経理部門の方が、だんだん事業にはいっていって、事業を支援できるFP&Aになります。
日本企業の経営管理組織の特徴は、経理でない人たちが事業部門で予算管理を行っている点です。これは、専門性を問わないメンバーシップ型経営、ジェネラリスト育成をしている日本企業特有の現象です。海外では、大学や大学院で会計や経営学を学んだ方や、会計資格を持つ方が計数管理を担当するのが普通です。

さて、Bさんは、FP&Aになることになりました。しかし、経理部門出身ではなく、もともとは理系出身でで、事業部門で戦略・中計のとりまとめ、予算管理を行ってきました。この度、A社が経営管理・計数管理機能をすべてCFOの下にまとめたので、BさんもFP&Aになったのです。

Bさんはとても優秀な方です。でもいきなりFP&AになってCFO組織に入れと言われても困ります。「経理知らないけど大丈夫か?」と不安になります。

わたしのアドバイスは、せっかくFP&Aのポジションに就いたのだから、今できることをやるということです。本社のFP&A組織の幹部の方はBさんのことをとても気にかけてくれています。幹部の方にお願いして、本社の経理部門についてオリエンテーションを受けることを提案しました。経理部、財務部、税務部、内部統制部門などで、実際だれがどんなことをしているのか。作っている資料、レポートなど見せてもらってイメージをつかむことができるでしょう。例えば税務申告書を見せてもらう。A社ではどのようなことを重視して経理財務の業務を行っているのか説明してもらいましょう。一度見て説明してもらえれば、かなり気が楽になるでしょう。見たことがないのとあるのとでは大きく違います。

私がP&Gのファイナンス部門にいたときはファイナンス部門の中の経理(Accounting))、財務(Treasury), 税務(Tax), 内部統制(Internal Control)などの専門部門や、FP&Aの中の利益予測(Forecast)、製造部門付ファイナンス(Supply Chain Finance)、R&D Finance、Sales Financeなど部門が、それぞれの業務の説明をする研修が行われていました。ファイナンスの人は、ファイナンス全体の業務の流れを知り、困ったときは誰に聞けばよいのかを分かっている必要があります。

理系出身のBさんが、本当にFP&Aの仕事をしたいかどうかは、やってみてから決めればよいと思います。せっかく素晴らしいポジションにいるので、今あるチャンスは使い切ってください。転職する際に、他社の経営企画や事業企画などに移ることもできるでしょう。どんな仕事に就くにしても、CFO/FP&Aの知識は役に立ちます。