FP&Aキャリア相談①管理会計を勉強中の大学生の方から
FP&Aに関する問い合わせをいただくなかで、キャリア相談をいただきます。
先日は、管理会計を勉強されている大学生の方からご相談をいただきました。「管理会計を使って1年目から仕事ができる就職先はないでしょうか」、というご質問です。
会計には大きく分けて次のように財務会計・税務会計と、管理会計があります。
財務会計は、企業が株主、債権者などに向けて、現在と過去の財務状況を報告するために使います。税務会計は支払うべき税金の金額を計算するために使います、それに対して、管理会計は、企業が現状を把握したうえで今後どのように企業価値を高めていくのか、業績目標を設定してそれを達成し、日々の意思決定の質を高めるために使います。
日本企業では経理財務部門がありますが、主には財務会計と税務会計を担当しています。管理会計はだれが担当しているのか?主には経営企画・事業企画が担当して、経理財務部門が少し予算管理を担当していると言われています。つまり、日本企業には管理会計を担当している一つの部門がありません。
一方、米国企業ではCFO部門が財務会計と管理会計の両方を担当しています。つまり、日本企業でいう、経理財務部門、経営企画・事業企画がすべてCFO部門の中にいるというイメージです。
さて、学生さんの質問に戻ります。管理会計を勉強した学生さんが、就職して一年目から管理会計を使って仕事をしたいと思ったらどこに就職すればいいのでしょうか。
一つの答えは、外資系企業のファイナンス部門に就職することです。例えばわたしが新卒で就職したP&Gのファイナンス部門では、1年目から管理会計の仕事をしていました。ほかの外資系企業においても、ファイナンス部門に入れば、1年目から会計業務に携わることでしょう。まずは経理部門に配属ということもあるとは思いますが、希望を出せば管理会計に関わるようになることができるでしょう。
ファイナンス部門で管理会計と担当するプロフェッショナルをFP&A(Financial Planning & Analysis)と言います。FP&Aは、企業内のさまざまな事業部門や機能部門(マーケティング、営業、サプライチェーンなど)を支援する部署を異動しながら、事業理解とスキルを磨き、プロフェッショナルとしての客観的視点、CFO部門の一員としての全社視点を使いながら、事業の業績向上に貢献します。FP&Aの業務は米国企業では一般的なので、他の会社に転職しても同様のスキルを使って業務にあたることができます。
一方日本企業の状況はいかがでしょうか。わたしがお話した日本企業では、まずは文系の新卒は一般採用で職種を限定せずに採用されるようです。最初の3年は営業を経験します。そのあと希望を出して部門に分かれ、たとえば経理部門に配属されます。経理部門ではまずは経理で出納担当ということです。つまり支払、記帳などの経理業務を担当するようです。経理部門内での管理会計業務を希望できるのは、さらに数年たってからのようです。長い道のりですね。
日本企業で管理会計を担当しているのは主に経営企画・事業企画である、というお話をしました。経営企画・事業企画は、事業部門で計数管理に関して優秀だとされた方が配属されるようです。経営企画・事業企画から、社長や事業本部長になるキャリアパスが一般的になるようです。つまり、経営企画・事業企画は管理会計の業務はしていますが、管理会計のプロフェッショナルを育てる部門ではなさそうです。管理会計のプロフェッショナルになるような育成がされているようではありません。ほかの会社でも通用するようなスキルを身に着けさせるという視点はないでしょう。
最近はグローバル化を意識されている日本企業では、新卒から職種別採用をすることもあるとお聞きしています。経営企画・事業企画、経理部門で新卒採用をすることもあるようです。
ということで、学生さんの質問に対しては、職種別採用をしている外資系企業か、一部の日本企業を探すのがよいのではないか、という提案をしました。せっかく専門的な勉強をされている学生さんが、すぐにそれを生かす場がないというのは残念なことですね。職種別採用を行い、入社後1年ほど営業や工場を経験するというのならいいのですが。。。入社して3年営業を経験して、そのあとどの部門に配属になるかがまったく保障されていない。。。という状況では、今どきの学生さんを困らせてしまうのではないでしょうか。どんな仕事でもいいから有名企業にはいって一生そこで過ごしたいと思う学生さんは減っているでしょうから。
日本企業の採用の仕方を変えれば、大学できちんと専門知識やスキルを身に着けたいと考える学生さんも増えるのではないでしょうか。