業績がいい会社のFP&Aが行っている12の行動原則(ベストプラクティス)
IMA (Institute of Management Accountants)という、グローバル管理会計士の協会で行ったアンケートでわかった、業績がいい会社のFP&Aがおこなっている12の行動原則がまとめられています。FP&Aは、Financial Planning & Analysisで、日本企業でいうところの経営企画のことです。
欧米企業では、FP&AはCFO組織の中にいて、MBAをとった人がなることが多いです。管理会計全般の業務、事業部門の業績目標の達成と意思決定を支援します。日本の経営企画部が担当しているように、中長期戦略の立案と計画策定、単年度予算策定と進捗管理、経営会議の運営、財務に関わる意思決定の支援を行います。欧米企業で特徴的なのは、FP&Aをファイナンシャルコントローラーと呼び、本部だけでなく、各事業部・部門にもコントローラーを置き、会社のすみずみまで神経系統を張り巡らし、会社全体の管理会計に関わる業務を取り仕切るところです。
FP&Aは非常に重要な役目で、単に管理会計の知識があるだけでなく、それを使って経営陣や事業部・部門の人たちのアクションを促し、売上増、利益増などの結果を出すところまでリードすることが求められます。つまり、そのためのソフトスキルが必要になる、なかなか難易度の高い仕事です。そのため、欧米の管理会計士の団体では、知識だけでなく、どう行動すると本当に業績向上の役に立つのかということを、インタビュー調査などからまとめているのです。
さて、どういうFP&Aが優れているのでしょうか。
まず一枚目のスライドです。FP&Aが効果的に機能している会社では(左欄)、株主価値が向上する、戦略を実行することができる、財務・非財務の目標を達成するメカニズムを構築することができ、社員がそれぞれ何をすれば会社の戦略を実行することができるかを理解し、会社の資源(人・モノ・カネ)を最適に配分することができ、プロジェクトの実行ができる、という素晴らしいものです。反対に、FP&Aが効果的に働いていないと、それらのことができない。組織の資源の無駄使いが起き、部門間に行き違いが多くなり、目標が達成できない、ということです。え、FP&Aの行動の違いで、会社にそんなに大きな影響があるんですね。そうなんです。本当にあると思います。戦略は、つくっただけでは実行できず、結果もでません。大勢の人たちを気持ちよく巻き込んで、実行してこそ結果がでます。それを促すのがFP&A(経営企画)です。
2枚目のスライドは、実際のどのような行動をするとよいのかを基本、中級、上級の3段階で表現しています。
第一に(基本)、FP&Aは、会社の戦略を、短期に達成できる活動に落とし込み、予算に織り込んで実行できるようにします。戦略があるだけでは実行できないし、予算がないとそれを実行する人とお金がありません。さらに、実行結果を見て、計画との違いを見て、早いタイミングで修正を促して、計画の達成を実現させます。
ひとつ重要なのは、FP&Aは、売上・利益などの財務数値が出てから”なんで差が出たんだろう”と分析を始めるのではく、その財務数値のもととなる非財務の情報の意味を熟知して、それを先に追いかけます。たとえば店舗ビジネスの場合は”客数”が重要ですね。客数の数字は毎日、毎時間わかるので、その動向を毎日見ていれば、売上がどうなりそうかは、決算が閉まる前でもわかるので、早くアクションを取ることができます。どんな非財務情報が重要かは、現場の人と話して理解を深める必要があります。
第二に、細かい計画を、現場の実行者の行動に落とし込み、実行してもらいます。Accountabilityという言葉がでてきますが、実行者にきちんと適切な責任を持ってもらうことが重要です。それを達成すると実行者の評価も報酬も上がるようにするのがいいですね。すると、自然と実行してもらえて、自然に業績目標も達成できます。
第三に、その現場の実行者が計画を実行して達成したらそれに見合った報酬がもらえるようにし、達成を促します。それをすべて仕組み化し、PDCAを高速で回し、自然に目標が達成できるようにします。
売上や利益といった、財務数値だけでなく、そのもとになる運営上の非財務の数値目標も設定し、進捗管理できることが重要。決算結果が出る前に、非財務の数値の動きから、将来の動向が察知でき、早く対処できます。数値をストーリーで語れることも重要。なぜそうなったのか、なぜそうなると予測できなかったのか。なぜ、今後そうなると思うのか。数字の裏の情報を理解し管理できることが重要です。
言うは簡単ですが、実際に行うことは大変です。財務・管理会計の知識、経営・コーポレートファイナンスの知識などのほかに、実際のビジネスの運営に関して深い知識と理解が必要なので、本当にスーパーです。でも、私が勤めてきた優良欧米企業には、これができる人がいました。日本企業でも、スーパーなFP&A(経営企画)の方を増やしていく支援をしたいです。
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