管理会計の教育と実務の距離を縮めたい

8月27,28,29日と、専修大学生田キャンパスで、2019年度管理会計学会全国大会が行われました。わたしは、28日に、研究発表をしに行ってきました。テーマは、「消費財製造事業会社における,意思決定のための製品別原価計算の実務利用について」。価格決定に使う原価は直接原価計算の値を使うのがいいのか、全部原価計算の値を使うのがいいのか。テキスト(教育)と実務のコンサルタントが何を言っているのかを調べ、また、わたしが昨年まで実務でやっていた、消費財製造業での価格決定のやり方の実例を紹介しました。

わたしは4月に外資系会社員をやめるまで、長年管理会計の実務を担当してきましたが、一度も管理会計の教科書で勉強をしたことがありませんでした。今年、青山学院大学院会計プロフェッション研究科の管理会計の授業に何回か参加してみました。管理会計の教科書も読みました。実務でやっている内容が教科書で確認できました。しかし、管理会計の授業を大学や大学院で受けている人たちの中で、実際に企業で管理会計を担当する人はあまりいないでしょう。大学や大学院で教えられている管理会計は、主に公認会計士の試験に必要な管理会計になっているそうです。実務で使うための管理会計教育ではなさそうです。

欧米企業では、管理会計は、CFO組織の中のFP&A(Financial Planning & Analysis)の部門で担当されています。ファイナンスコントローラーと言って、本社だけでなく、各事業部、部門にも配置され、会社中に散らばって、管理会計と担当し、業績目標の達成と、意思決定を支援します。

一方、日本企業では管理会計は、経営企画部や、事業企画、原価企画など、各部門でいろいろな人たちによって担当されていると言います。ばらばらです。管理会計の基準もおそらく統一されていないでしょう。彼らは、各部門から優秀な人が集められてはいますが、キャリアパスとして”企画”という仕事が整備されておりません。中には、これではいかん、と思って国内MBAに行ったり中小企業診断士の勉強をする人がいます。そうでない場合は、管理会計の勉強をきちんとしたことのない人たちが担当しています。果たしてそれでいいのでしょうか。これは日本特有の事象です。彼らがきちんと経営学、会計(財務会計と管理会計両方)、コーポレートファイナンスなどをきちんと勉強すると、もっといい仕事ができるのでは?

企業で管理会計を担当している人たちをきちんとCFO組織に入れて、管理会計の教育を提供すべきでは?管理会計は企業の業績を左右します。日本企業の業績向上のために、管理会計担当者のスキル向上に貢献したいです。

29日は、学会の先生の発表を聞きました。

わたしが28日に主張したことを言っている、MBAの著名な先生がいらっしゃいました。管理会計のテキストを、もっと実務の役に立つように変えるべきだと言われていました。わたしは、手を上げて、”テキストを改善しても、企業で管理会計を担当している人は読んでいない。直接彼らに働きかけなくては”と提案しました。

また、別の発表では、欧米の管理会計の協会の持っている管理会計基準・原則等を、日本に取り入れてはどうかという話をしています。わたしはとてもいいことだと思いますので、積極的に紹介していきます。たとえば、IMAが調査してまとめた、「業績の良い会社のFP&Aがやっている12のこと」「管理会計担当者のコンピテンシーフレームワーク」。あちこちで積極的に広めています。

また、会計士がどのように事業部を支援していけばいいのか。どのような行動をとればいいのか、というのが話題になっていました。まさしく私が紹介しているテーマです。来週の原価計算学会の統一論題にて、発表させていただきます。